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横山自研「“関の刃物”を支える金属加工の技術や価値を発信し、広く伝えたい」

“刃物のまち”関市で、研削(けんさく)研磨や表面処理などの金属加工を行う「横山自研」。

包丁やはさみ、スクレーパー(ヘラ状の工具)、スパチュラ(ヘラ状の調理器具)などの研削研磨で40年以上の実績を積み、これまでに数百万本を超える加工実績を誇ります。 


工場の入り口に積み上げられたケースの中には、まさに刃物の原型となる鋼材がみっちりと並んでいます。

横山自研さんでは、関市内にある刃物・金属メーカー24社をはじめ、県外のメーカーからも研削の仕事を受けており、それぞれの企業から年間10万〜15万本もの鋼材が届くのだそう。

それを工場内の機械を使って、一本一本、手作業で研いでいます。研ぎ終わった鋼材は見違えるほどに美しくなります!

ほとんどの刃物メーカーでは、最後の仕上げとなる「刃付け」を自社で行っており、刃物の切れ味はこの「刃付け」によって決まると言われています。そのため、仕上げ前の段階にあたる「研削」の工程はあまり注目されていませんが、実はこの研削の工程こそが、その後の刃物の切れ味を大きく左右するのだそう!

横山自研さんでは、その後の「刃付け」の工程や最終的な仕上がりを考慮して、どの程度の厚みや研ぎ具合にするのが良いか、逆算しながら研削を行なっています。

そのため、鋼材の種類や性質によって研削の仕方を変え、例えば軟らかい鋼材はやや厚めに、硬い鋼材は0.2mmなどかなり薄くまで研いでいます。

 

工業用の砥石をセットした機械で一本ずつ手作業でナイフを研ぐ

早速、横山浩充さんに工場内で実際にナイフを研削する作業を見せていただきました。工業用の砥石をセットした機械で、一本ずつ手作業で研いでいきます。

「400種類以上の製品を扱っているんですが、実はどれもすべて基準書のようなものがないんですよ。だから、どんな材料で何に使うのか、どんな仕上がりにすればいいのかを考慮して、研削する角度などは経験値に頼るだけでなく数値化もしながら作業をしています」。

ナイフのもととなる鋼材を磁石にセットして、機械をボタンで操作しながら砥石でナイフを研いでいきます。

研削する際はかなり高温の熱が発生するため、刃が焼けないように工場内に設置したホースから大量の水をかけ、冷やしながら作業を進めます。

あっという間に1本が研ぎ終わりました!しかし、何千、何万本もの鋼材を日々、こうした手作業で研いでいくのは大変な労力です。

 

小さな工場で行われる下請けの作業が“関の刃物”を支えている

「“関の刃物”は、今では海外からも認められ、注目されています。でも、良い刃物ができるためには、プレスや研削といった金属加工など、いわゆる下請けといわれる業者の高い技術も重要なんです」と横山さん。

「下請け業者が安い単価でとにかく数をこなす、という現状が続いていては、今後、後継者も育てられないし、そもそもこの仕事をやりたいという人もいなくなります。もっと、知られていない自分たちの仕事や技術に対して正当な評価がされるように、関の刃物の素晴らしさ、技術の高さ、その価値を広く伝えていかなくてはいけないと思っています」。

そこで、横山さんは自身のX(旧Twitter)で、自身が粗研ぎ(荒砥と呼ばれる砥石で粗く研ぐこと)をした包丁の刃でトマトを切る動画を公開。

すると、最終的な仕上げの「刃付け」を行っていなくても、スッと見事に薄くトマトが切れる動画は反響を呼び、500万回以上再生されました!

また、自身でオリジナルブランドのアナザークリエイトを立ち上げ、女性へのギフトを想定した包丁を製作。

野菜など切った食材の刃離れを良くするための槌目(金槌などで表面を叩き、凸凹にする加工)をハート型にすることで遊び心を加えた、本物志向の包丁をオンラインストアで販売したところ、ヒット商品に!

このように横山さんは、SNSやオンラインストアを活用しながら、“関の刃物”や関のものづくりを支える金属加工の技術の高さ、素晴らしさを広く発信しているんです。

 

工場見学の見どころは?

工場見学では、年代ものにして今なお現役の機械を駆使して、一本一本、手作業で研削加工を行う様子が見学できます。

もちろん、横山さんの熱意がひしひしと感じられるトークもお聞き逃しなく!